雑誌「@SHIBUYA PPP」Vol.12

 女性ボーカリスト特集。

 

 ●「小島麻由美」さん

 

越路吹雪さんのトリビュートアルバムで、彼女は「ろくでなし」を歌っていた。スピッツのトリビュートアルバムでは、「夏の魔物」をカバーし、最後を締めくくっていた。そのどちらも素晴らしい歌唱とサウンドメイキングで、私の中では、小島さんは女性ミュージシャンの中で特別な存在のひとりだった。とても大人な雰囲気の歌なので、そういう方なのだろうと思い、取材先に向かったら、そこにいらしたのは、可憐な印象の女性でした。

 

 ●「夏木マリ」さん

 

 映画『Samurai Fiction』では、旅籠の女将を演じた。『ピンポン』では、ペコを支える卓球場のおばばの役。『千と千尋の神隠し』では湯婆婆の声優。自分は1973年の「絹の靴下」からリアルタイムなので、それから25年以上(取材当時)。つねに表現という舞台の第一線に立ち続ける夏木さんは、"凄い”と思います。彼女とご一緒した渋谷エリアのポイントは、神宮前の小さなレコードショップ。壁面のレコードを見ていた時、店内にセルジュ・ゲンズブールの曲が流れ、彼女はそれに合わせて静かに歌った。

 

 

  雑誌「@SHIBUYA PPP」Vol.14

 「Imagine, here is the HEAVEN」特集。

  

 「First Sight」 撮影:滝本幹也 モデル:中谷美紀 撮影協力:明治神宮

雑誌の巻頭に常に置かれてきた「First Sight」。かなり文字数の多い「前書き」です。今思えば、マス媒体である雑誌を、なるべくパーソナルなやり取りの場、今の言葉で言えば"インタラクティブな出会いの場"にしようとこれをやっていたと思います。雑誌のネーミングも、「@SHIBUYA PPP」。「PPP」とは、パーソン・トゥ・パーソン・プレス(Person to Person Press)の略でした。

環境問題を特集した号です。環境問題には以前から興味がありましたが、自分が興味を持っていることと雑誌を関係させないようにしていましたので、それは基調低音のように響いてはいましたが、前面には出さずに来ていました。それが特集となりましたが、前書きで書いたのは、それほど明るい未来の姿ではありませんでした。

「・・人類が近代文明を作り出し、そこに欲望の歯止めを効かさない消費社会の構造が重なって、地球規模の環境破壊が2020年代には顕在化するといわれています・・環境破壊と社会の崩壊が重なってやってくるという予測は、ノストラダムスの予言のような神秘的なものではなく、着実なデータ分析の積み重ねから打ち出されています。あと20年もしないうちに現実化してくる破壊と崩壊。人間が被る自然からのしっぺ返し。社会主義と資本主義の対立といった軸でもない、もっと大きな価値観の大転換。それを受け入れ、次の変化に入っていくためには、それくらいの”絶体絶命度”が必要なのでしょうか(「人間は最悪の事態にならなければ立ち上がらない」はライアル・ワトソン氏の『ロスト・クレイドル』の中での発言です)。・・」

自分としても、東京のど真ん中に寝起きして、ひたすら回転し続けながら雑誌を出してきたその行為を、見直すときが来ていました。

いつも自分が作るものと自分自身がリンクしていた。自分が興味を持ち、取材し、テキストを書き、ページを作る。それは自分にとって、いつもリアルなことであり、好奇心が生き生きと向き合っていく物事との交流の結果でした。

そうならば、行き詰まった、病的な都市文明、東京病の行方に何があるのか、その代替物、「次」というものを、自分なりに確かに実感しないと、一歩も先に進めない。その模索と出会いの旅に、この後、出かけていくことになります。

 

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