*REVIEW_Music 3
『 LUDWIG VAN BEETHOVEN Symphony no.7』 Conductor : Gustavo Dudamel Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela 「ベートーヴェン 交響曲第7番」 指揮:グスターボ・ドゥダメル シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ヴェネゼーラ ☆☆☆☆ ほとんど何の知識もなく、このCD(第7番)を 聴いたとき、 天下のドイツグラムフォンから出ている、 メジャータイトルなのだから、
音楽教育担当者は言う。「私たちの音楽教育のゴールは、プロフェッショナルな音楽家の養成にあるのではありません。子供たちの救済です」。事実、11歳でスーパーマーケットで働いていた少年が、地元の音楽学校のことを知り、ヴィオラを手にする。彼は今、ベルリンフィルのコントラバス奏者となっている。 さてドゥダメルとSBYOの音楽である。オーケストラの音色は澄明で、各部の輪郭はくっきりとし、旋律もよく歌う。この曲が持つ躍動感が、演奏者たちの若さによって自然に表現されていく。
大家や巨匠の場合、往々にして、その名前(彼ら自身の自尊心その他)のために演奏は力が入ったものになり、特別な何かはそこにあるが、音楽そのものが鳴り響くような感動は相対的に薄くなる(必然的に演奏者が前に出る)。
管楽器の咆哮も、打楽器の連打も、ベートーベン音楽が時に持つ、押しつけがましさやしつこさを感じさせない。演奏者たちの若いエネルギーが自然に発散され、疾走していく。彼らの若いエネルギーが、楽曲を追い越していくようなスピード感が現れる。青春のベートーヴェンである。
では有名な第2楽章はどうなるのか。ドゥダメル+SBYOの緩徐楽章には、深い憂愁や、徒労感がにじむ。生きることの苦しさ。その中に指す希望や歓びが、音の中から立ち上がる。どんな楽器を演奏していても、SBYOの全員にとって、音楽は、彼らの困難な「生」を基盤にして生れてくる。彼らにとって、第2楽章に刻まれた憂愁や、困苦の中の光は、生きる実感そのものなのである。当然彼らが奏でる音楽は、カラヤン、アバド、クライバー等が響かせるものとは違ってくる。
指揮者ドゥダメルは、ヴェネゼーラから生れたクラシック音楽界の逸材(スター)だ。2004年の第1回グズタフ・マーラー指揮者コンクールで優勝している。スコア解釈と、それを実現する演奏をオーケストラから引き出す能力は、世界的なレベルにあり、最も注目を集めるひとりになっている。
この7番の演奏を作曲者が聴いていたら、最後の音が鳴り響く前に立ち上がり、拍手を送ったのではないだろうか。
*YouTubeでは、彼らが体育館のような場所で、ヴェネゼーラ国民を前に演奏している様子がアップされている。交響曲5番が終わると、まるでヒットソングの演奏が終わったときのような、熱狂的な歓声を贈る。多分アンコール曲なのだろう、演奏者も観客も、体を揺らして音楽を楽しみきっている。 http://www.youtube.com/watch?v=ku1BZmx9Usw http://www.youtube.com/watch?v=GvzInC1CR0M
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